企業の防災備蓄品とは? BCP対応と期限管理の基本

企業の防災備蓄品は、従業員の安全を守るだけでなく、BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)の観点からも重要性が増しています。

「何をどれだけ用意すればよいか分からない」「期限切れを理由に大量廃棄した」「担当者が変わって管理情報が引き継げていない」などの総務・CSR担当者が抱える課題は、備蓄の仕組みを見直すことで解決ができます。

本記事では、企業の防災備蓄品に必要なものと数量の目安から、管理面の課題と解決策、廃棄ゼロと社会貢献を両立する施策までを解説します。

目次

1)企業が防災備蓄品を備えるべき理由
2)企業の防災備蓄品「何を・どれだけ」用意するか
3)企業の防災備蓄品管理でよく起こる3つの課題
4)防災備蓄品の管理を仕組み化する方法
5)廃棄ゼロ×社会貢献を両立する新しい選択肢
6)防災備蓄品の見直しを、次のアクションへ

企業が防災備蓄品を備えるべき理由

企業が防災備蓄品を整備する背景には、労働法上の安全配慮義務と行政が示すガイドラインの2つがあります。どちらも「防災備蓄品を用意したら終わり」ではなく、継続的な運用が求められます。

BCP(事業継続計画)における備蓄の位置づけ

BCPとは、災害や緊急事態が発生した際に事業を継続・早期復旧するための計画です。事業継続は従業員の安全確保なしに成立しません。防災備蓄品はBCPの「初動対応フェーズ」を支える基盤となります。

内閣府「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」は、組織・企業の事業継続能力向上を目的として策定されており、災害時には従業員の安全確保を含む初動対応の整備を企業に求めています。防災備蓄品の整備は、その具体的な手段のひとつとして位置づけられます。BCPを策定済みの企業でも、備蓄品の内容が実態に合っているかを定期的に見直すことが重要です。

出典:内閣府「事業継続ガイドライン(令和5年3月)」(https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/pdf/guideline202303.pdf

安全配慮義務と帰宅困難者対策条例が求めること

東京都では「東京都帰宅困難者対策条例」(平成24年公布・平成25年4月施行)により、従業員の施設内待機と3日分の備蓄整備が安全配慮義務として定められています。罰則を伴う強制義務ではありませんが、行政が備蓄の必要性を明示したことで、企業内での防災備蓄品の準備を推進するきっかけになっています。

出典:東京都「東京都帰宅困難者対策条例」(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/kitaku_portal/1000050/1000536.html

企業の防災備蓄品「何を・どれだけ」用意するか

備蓄量の基本は「1人3日分」ですが、この数字はあくまで参考値です。自社の実態に合わせ、個別に実効性のある防災備蓄品を用意する必要があります。

備蓄量の基本「1人3日分」の内訳

内閣府の推奨基準をもとにした、1人あたりの備蓄量の目安は以下のとおりです。

▼1人3日分の備蓄量目安

品目

1日あたり

3日分合計

飲料水

3L

9L

食料

3食

9食

簡易トイレ

5回分

15回分

飲料水は2Lと500mlのペットボトルを組み合わせると、保管スペースと使い勝手のバランスが取りやすくなります。食料はアルファ米などの主食に加え、クッキーやパンなどの間食を組み合わせるのが一般的です。

なお、この目安の水には手洗い用などの生活用水は含まれていないのでご注意ください。

見落とされがちな個別設計の視点

「1人3日分」の防災備蓄品は全社員が3日間オフィスに留まることを前提とした数字です。しかし実際には企業の立地や従業員の特性によって、必要量は大きく変わります。

確認すべき主なポイントは以下のとおりです。

  1. 在社人数・勤務形態
    テレワーク比率が高い場合、災害時の実際の在社人数が少なくなるため、企業の備蓄量も減少します。

  2. 通勤手段
    車通勤が多い地域では、帰宅困難者が少なく備蓄量を抑えられる傾向があります。一方で寮など企業が管理する建物で生活する社員が多い場合は、防災備蓄品が多く必要です。

  3. 拠点ごとの備蓄量構成
    本社と営業所で人数・保管スペースが異なるため、拠点ごとに防災備蓄品の構成を変えることが一般的です。

  4. 来客・外部関係者
    災害発生時に社内にいる可能性のある来客や取引先への配慮も必要となります。

上記のように、防災備蓄品を手配する際に単純に「3日分×社員数」としてしまうと、過不足が生じやすくなります。業態・保管スペース・拠点ごとの人数を踏まえた個別の防災備蓄品設計が大切です。

防災備蓄品にしたい、その他の品目

食料・飲料水以外にも、企業として備えておくべき品目があります。

  • 生活用水:手洗い・トイレの洗浄・清掃などに使用する水。
  • 安全確保用品:ヘルメット、防災ずきん、軍手、懐中電灯
  • 情報収集用品:携帯ラジオ、予備電池、モバイルバッテリー
  • 衛生・生活用品:簡易トイレ、ウェットティッシュ、マスク、毛布
  • 応急処置用品:救急セット、薬

カセットコンロや携帯用ガスボンベも、食料の調理・温めに役立ちます。品目の選定は、自社の建物構造や立地リスク(地震・水害など)に応じて優先順位をつけましょう。

企業の防災備蓄品管理でよく起こる3つの課題

防災備蓄品を用意した後も多くの企業では、管理・運用の問題に直面します企業の防災備蓄品は購入したら終わりではなく、継続的な管理の仕組みが不可欠です。

担当者交代による情報管理の断絶

防災備蓄品の担当者の異動や退職により、「何をいつ購入したか」「どこに保管しているか」「次の更新時期はいつか」といった情報が引き継がれないケースは少なくありません。

防災備蓄品の情報管理が属人化すると、仕様期限の把握が困難になり、気づいたときには期限切れという事態を招きます。管理台帳や管理システムによる防災備蓄品情報の管理が、担当者交代リスクの対策にはおすすめです。

使用期限切れによる大量廃棄

現在、防災備蓄食品の期限は5年が主流です。(なお、飲料水は5〜10年のものが多く流通しています。)防災備蓄品は期限が長いぶん、「まだ大丈夫」という意識が生まれ、管理が後回しになりがちです。

防災備蓄品の期限切れに気づかず大量廃棄が発生すると、コスト損失だけでなく、サステナビリティの観点からも課題になります。廃棄ロスを防ぐには、期限の1年前には「防災備蓄品をどう処理するか」を検討し始めると良いでしょう。

定期的な見直しサイクルが回らない

防災備蓄品の期限は5年前後が多いため、見直しも4〜5年ごとになります。しかし、このサイクルを組織として仕組み化できている企業は多くありません。

「前回いつ更新したか分からない」「次の更新予算をいつ取ればよいか分からない」という状況は、担当者が変わるたびに発生しがちです。期限や見直しのタイミングを情報管理台帳などに明記し、予算取りから逆算して動く体制が必要です。

防災備蓄品の管理を仕組み化する方法

課題を把握した上で、具体的な管理の仕組みを整えましょう。特に「保管設計」と「期限管理」は、運用の継続性に直結します。

保管場所・分散管理のポイント

備蓄品の保管場所は、以下の点を考慮して設計します。

  • 防災発生直後にアクセスがよい場所
  • 災害時のリスク分散ができるよう、保管先も分散
  • 高温多湿を避け、直射日光の当たらない場所

拠点が複数ある企業では、本社と各拠点で保管品目・数量を分けて管理する台帳を整備することをおすすめします。

ローリングストック法と期限管理の基本

ローリングストック法とは、古いものから順に消費しながら新しいものを補充し、常に一定量の備蓄を維持する方法です。家庭向けに広く知られている用語ですが、一部の企業でもローリングストック法は取り入れられています。

企業での具体的な実践例としては、次の2つが挙げられます。

【実践例1|防災訓練・研修での消費】

防災訓練の際にアルファ米や保存水を実際に調理・試食し、消費した分を補充する方法です。防災訓練と防災備蓄品の更新を同時に行えるため、備蓄品が「使われないまま期限を迎える」事態を防ぎやすくなります。

【実践法2|福利厚生としての活用】

期限が1〜2年以内に迫った備蓄食品を社員食堂や休憩室に提供し、日常的に消費する仕組みです。廃棄ロスを減らしながら、社員に防災備蓄品の存在を認識してもらう機会にもなります。

ただし、これらの実践法を用いても備蓄量が消費しきれない企業は珍しくありません。購入時に防災備蓄品の期限を台帳に記録し、期限の1年前には見直しや期限切れ時の対応を検討することが現実的な管理の基本です。

なお、飲料水は賞味期限が切れた後も、手洗いやトイレの洗浄・清掃などの生活用水として転用することができます。「期限が来たら廃棄するしかない」と考えず、用途を切り替えて保存することもご検討ください。

廃棄ゼロ×社会貢献を両立する新しい選択肢

前述した飲料水の転用にとどまらず、防災備蓄品において、「廃棄するしかない」という状況を変える取り組みが広がっています。これは期限前の防災備蓄品を有効活用し、企業のサステナビリティ活動につなげられる取り組みです。

期限前回収→フードバンク寄付→新規購入の循環モデル

企業向け防災備蓄品リユースサービスStockLinkSのテキストと備蓄品を受け渡ししている様子を示したイラスト

竹田印刷株式会社が提供する「StockLinkS(ストックリンクス)」は、企業が保有する防災備蓄品を賞味期限前に回収し、フードバンクや子ども食堂・生活困窮者支援などへ寄付するリユースサービスです。

回収対象の防災備蓄品は食品に加え、カセットコンロ・ヘルメット・懐中電灯・ラジオなどの防災用品も含まれます。回収後は、公益社団法人「日本非常食推進機構」を通じて寄付先へ届けられます。

廃棄コストをゼロにしながら社会貢献活動としてサステナビリティレポートへの掲載をするケースも見られます。

賞味期限の一括管理と活動報告書でSDGs対応を効率化

StockLinkSでは、竹田印刷が手配した防災備蓄品の期限を管理し、期限の1年前にご連絡します。担当者が変わってもStockLinkS側で管理情報が引き継がれるため、属人化による期限切れリスクを軽減することができます。またStockLinkSでは、寄付をした防災備蓄品の実績をまとめた活動報告書の提出も行います。社内周知やサステナビリティレポートへの掲載にも活用でき、CSR活動のひとつとして導入いただける仕組みです。

防災備蓄品の見直しを、次のアクションへ

企業の防災備蓄品は、揃えるだけでなく「管理・更新・活用」の仕組みまで設計することで、はじめて機能します。

在社人数・通勤手段・拠点に合わせた個別設計が、過不足のない備蓄につながります。防災備蓄品の期限の1年前から動き始めることで、廃棄ロスと調達リスクを同時に防ぐことにもつながりますまた、防災備蓄品を期限前に各種施設に寄付することで、廃棄コストの削減と社会貢献活動の両立が実現します。

防災備蓄品の整備・見直しをご検討の際は、まずはお気軽にご相談ください。

この記事の執筆・監修:竹田印刷株式会社 どっとカエールチーム

どっとカエールチームは、文房具から防災備蓄品まで幅広い商品の仕入れ販売を手がけています。企業ごとの業態・拠点構成・保管環境に応じた個別提案を強みとし、防災備蓄品の選定から期限管理・廃棄ゼロの仕組みづくりまで一貫してサポートします。

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